放射線科

バリウム検査(上部消化管エックス線撮影)の手順

□撮影時間……約7分

バリウム(造影剤)、発泡剤(炭酸ガス)はなぜ必要?

普通の腹部単純撮影、胃は解りません。胃はエックス線をほぼ透過してしまうのでそれ自体は映りません。通常時、胃はエックス線に対し透明な“しぼんだ風船”のようなものです。この見えない胃を“見えるようにするため”にバリウム(造影剤)が必要であり、観察領域を広げるために発泡剤が必要なのです。ですからこの検査では胃が写るのではなく胃の中のバリウムが写ることになります。

 

ゲップを我慢して体の向きをいろいろ変えるのはなぜ?

白い部分がバリウムです。検査の最初に飲んでいただく発泡剤は胃を膨らます薬です。胃を膨らますことによって胃壁をのばし、胃の内壁全体をくまなく観察することが出来るようになります。膨らんでない胃袋では胃の中を十分観察することはできません。

バリウムはX線を多く吸収する働きのほか、胃の壁を洗浄する働きがあります。胃の内壁には通常は胃液、飲み込んだ唾液等が付着しています。バリウムを飲んだ後、回転していただくのはこれらの余分なものをバリウムで洗い流し、胃小区という細かい網目模様を描出するためです。

私達はこの胃小区の乱れ、襞の寄りなど微細な所見を頼りに癌などの病変を見つけています。

重要なことは「胃を炭酸ガスで膨らまし→胃壁を十分洗浄した後→撮影のたびに表面を洗いなおして撮ること」です。

動かない検査では良い写真とはいえません

【お願い】

当院でご用意させていただいておりますバリウムは140ccで、他院と比較しましても量は決して多いほうではありません。この量で良い検査をするためには必ず全量が必要です。がんばって全量飲むようにお願いいたします。バリウムが少ない場合は検査結果が出せない場合がございますのでご注意ください。
この量のバリウムで胃の内壁をくまなく撮影するには撮影ごとに胃壁をバリウムでコーティングする必要があります。そのため以前に比べて、かなり動いていただきますのでご了承ください。

当院では異常がない場合でも「日本消化器がん検診学会」、「NPO日本消化器がん検診精度管理評価機構」推奨の基準撮影法に加え、任意撮影を2枚余分に撮影しております。
また異常を発見した場合はさらに追加撮影をします。

【検査手順】

① 発泡剤(顆粒)を口の中に入れ、少量の水または少量のバリウムと一緒に飲み込みます。おなかが張ってゲップがでそうになりますが、できるだけ検査終了までゲップを出さないで下さい。ゲップが出てしまった場合は追加で飲んでいただく場合があります。

② バリウムを大口でゴクゴクと全て飲んで下さい。続けて飲んでいただくと食道がきれいに膨らんで撮影できます。
バリウムはおいしいものではありませんが、飲むのに時間をかけすぎてもバリウムが腸へ流出して画像が悪くなります。逆にあわてると誤嚥をしたり、服にこぼしてそれが写ったりしますので、こぼさない様に注意してお飲みください。

③ 寝台を水平に倒した後、最初に胃壁を洗浄するためすばやく右回転で3周していただきます。(写真1)

④ その後、体を仰向けや、右に回転させるなどのさまざまな動きをして撮影します。中でも腹這いで撮影するときは強く逆傾斜をして撮影します。(写真2) また撮影時には胃の動きを止めるために「息を止めてください。」という指示をします。呼吸をしたままですと動いてぶれた写真になってしまいます。指示がありましたら、しっかりと息止めをしておなかを動かさないようにお願いします。

写真1
写真2

※頭低位撮影の場合は肩当をして安全を確保して行います。

2014年度~2015年度の2年間のうち、当院の健診で見つかった小胃がん症例です。

写真2
写真2
写真2
写真2

上記写真のように病変発見時には、質的診断を可能にするため、病変の大きさ、良悪性の判断、深達度診断(悪性であれば早期がんか進行がんかの判断)を医師に提示できる写真を追加撮影いたします。

※期間内、胃がんは上記を含む7例(診断確定例)で見つかっています。
このほかにも数例のがん疑いの症例はありますが、当院で二次検査を受診されていない方もみえますので、確定診断には至っておりません。